女性側の不妊の原因は、大きく「排卵の障害」「着床障害」「卵管の障害」に分けることができます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
排卵の障害
卵巣のなかで卵胞が全く育たない、あるいはある程度までしか成長せずに排卵が起きない状態。
おもな原因疾患
【高プロラクチン血症】プロラクチンとは妊娠後期や授乳時に盛んに分泌され、母乳の生産を促すホルモンで、「乳汁ホルモン」とも呼ばれます。この病気では妊娠をしているわけでもないのに母乳がうっすらと出ることがあります。血液中のプロラクチンの濃度が高いと、卵胞刺激ホルモン(エストロゲン)と黄体化ホルモン(LH)が正常に分泌されないので、月経不順や無月経、無排卵、黄体機能不全などが起き、妊娠しにくくなることがあります。原因ははっきりわかっていませんが、精神科で処方される薬や胃薬の服用で発症することもあります。高プロラクチン血症は薬物療法によって改善可能です。
【多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)】卵巣のなかで卵胞は成熟するのに、卵巣の外側の膜が固くて排卵できない排卵障害です。肥満傾向があり、多毛で声の低い人に多くみられるため、男性ホルモンの分泌異常が関係しているとする説があります。排卵誘発剤を投与して排卵を促すのが代表的な治療法となっていますが、この方法には卵巣過剰刺激症候群(OHSS※)という副作用の発生リスクが高くなるデメリットがあり注意が必要とされます。
着床障害
子宮内環境に何らかの異常があり、受精卵が子宮内膜に上手く着床しない状態をいいます。
おもな原因疾患
【黄体機能不全】排卵によって卵子が飛び出した後の卵胞は「黄体」に変化し、黄体ホルモン(プロゲステロン)を放出して子宮内を妊娠しやすい環境へと整えます。黄体ホルモンの分泌量が少ない「黄体機能不全」の状態に陥ると、子宮内膜(※)が受精卵を迎えるのに十分な厚さにならず着床が難しくなります。黄体ホルモンの分泌が少ないと高温期が短くなるので、基礎体温表で高温期が8~10日以内の場合(28日周期の人であれば通常は14日)や、高温期と低温期の体温差の平均が0.3℃以内(通常は0.7℃程度)の場合は黄体機能不全が疑われます。治療は排卵誘発剤を使って排卵を促す方法が一般的です。
【子宮筋腫】子宮の筋肉の内外にできる良性の腫瘍。できた場所によっては着床を妨げたり、流産の原因になったりすることがあります。重症化すると生理の時の出血量が多くなり、ひどい生理痛や貧血などの症状が現れることがあります。着床の障害になっているケースでは手術で筋腫を取り除く(筋腫核出術)ことがあります。
【子宮の形状の先天的異常】子宮が左右に2つある重複子宮、片方の卵管と卵巣が未発達な単角子宮、子宮の底が動物の角のように2つに分かれている双角子宮など、子宮の形状に異常があると着床しにくくなります。
卵管の障害
卵子や精子の通り道であり、受精の場でもある卵管が狭かったり、詰まっていたりすると妊娠が難しくなります。卵管の先端にある卵管采(※)に形状の異常や癒着があり、排卵した卵子を卵管に送り込むことができない「ピックアップ障害」、卵管が何らかの理由で通っていない「卵管通過障害」などがあります。重い卵管障害がある場合は体外受精が妊娠の有効な手立てになります。
おもな原因疾患
【子宮内膜症】本来は子宮の内側にだけ存在するはずの子宮内膜組織が子宮以外の場所に発生し、生理周期に合わせてその場で出血を繰り返す病気。重症化すると炎症によって卵巣や卵管周囲に癒着が起こることがあります。また卵巣内に子宮内膜症が発生すると卵胞の発育が妨げられる可能性が。治療法としては、ホルモン薬を投与し一時的に生理を止めて病巣を小さくするホルモン療法、手術で癒着した部分をはがす手術療法などがあります。
【クラミジア感染症】セックスによっては感染する性感染症(STD)の一種。クラミジアに感染にすると、卵管やその周囲に炎症が起き、卵管が詰まったり、周囲の組織と癒着を起こしたりすることがあります。感染している場合は夫婦揃っての治療が必要になります。
そのほかの障害等が原因の不妊症
女性の体内に精子の運動能力や生殖能力を低下させる抗体(=抗精子抗体)があるケース。女性のおおよそ200人に1人がこの抗体をもっているといわれます。女性の体内では受精が望めないため、体外受精の適用になります。
【子宮頸管粘液の異常】子宮の入り口(子宮頸管)で分泌される子宮頸管粘液は、普段は膣の中に細菌などが入らないようにバリアの役割を果たしていますが、排卵日が近づくと分泌量が増え、精子が通過しやすい性質に変化します。この子宮頸管粘液の量が少ない場合や異常がある場合は精子が子宮の中に進入していくことができません。
【機能性不妊】不妊の検査をやってもとくに異常がみつからない原因不明の不妊の総称で、不妊全体の約10%を占めます。精子が卵子の中に入り込めない「受精障害」や黄体機能不全、卵子のピックアップ障害が関係しているのではないかと考えられています。
※卵巣過剰刺激症候群(OHSS):排卵誘発剤で卵巣を刺激することによって卵巣が大きく腫れたり、腹水や胸水がたまったりする病気。
※子宮内膜:子宮の内側を覆う薄い膜。子宮内膜に受精卵が潜り込む(=着床)すると妊娠が成立する。
※卵管采:卵管の先端の手の指を広げたような形状の部分。排卵された卵子をキャッチして卵管内に送り込む役割を担う
